複合AIシステム(Compound AI Systems)とはAIも専業分担の世界へ

  • 2024.03.09
  • AI
複合AIシステム(Compound AI Systems)とはAIも専業分担の世界へ

複合AIシステム(Compound AI Systems)とは、単一のモデルに依存する時代から、より複雑な多成分構造を持つAIシステムへと移行しているトレンドです

複合AIシステムとは、複数の人工知能モデルやコンポーネントが組み合わされたシステムのことを指します。単一のAIモデルを使うのではなく、様々な専門分野の知識や機能を持つAIを統合することで、より高度で汎用的な知能を実現しようとするアプローチです。

複合AIシステムとは

複合AIシステムは、複数のAIモデルを組み合わせることで、単一のAIモデルよりも高度な機能を実現するシステムです。従来のAIシステムは、特定のタスクに特化した単一のモデルを使用していましたが、複合AIシステムは、複数のモデルの強みを活かすことで、より複雑なタスクを実行することができます。

具体的には以下のようなアプローチが考えられます。

  1. 複数の大規模言語モデルを組み合わせる
    • 一般知識を持つ大規模言語モデル
    • 特定分野の専門知識を持つ言語モデル
    • マルチモーダル入力(画像、音声など)を処理できる言語モデル
  2. 専門タスク用のAIモデルと統合する
    • 画像認識、音声認識などの専門モデル言語モデル統合
    • 推論、計画立案、意思決定などの専門モデルとの統合
  3. シンボル処理AIやルールベースAIとのハイブリッド化
  4. 強化学習エージェントなどの能動的なAIコンポーネントとの連携

複合AIの利点は、単一モデルの限界を補い、より汎用的で高度な知能を実現できる点にあります。しかし課題も多く、モデル間の整合性、制御性、安全性の確保が重要になってきます。現在、複合AIシステムの研究開発が活発に行われています。

複合AIシステムの構成要素

複合AIシステムは、主に以下の3つの要素で構成されます。

  • 1. 複数のAIモデル:複合AIシステムには、異なる種類のAIモデルが組み込まれます。例えば、画像認識モデル、音声認識モデル、自然言語処理モデルなどが組み込まれることがあります。
  • 2. モデル間の連携:複数のAIモデルは、単独で動作するのではなく、互いに連携して情報を共有します。この連携によって、各モデルが個別に処理するよりも高い精度を実現することができます。
  • 3. 全体を統括するシステム:複数のAIモデルとモデル間の連携を管理するシステムが必要です。このシステムは、各モデルに適切なタスクを割り当てたり、モデル間の情報の流れを制御したりします。

コンパウンドAIコンポジットAI

コンパウンドAIコンポジットAIは、両方ともAIの進化において重要な概念ですが、異なるアプローチを持っています。

  1. コンパウンドAI (Compound AI):
    • 複数のAIモデルを組み合わせて1つのAIを構築する手法です。
    • 例えば、画像認識、数値解析、ルート探索など、異なる知的タスクを含む複雑なタスクを対象にします。
    • タスクごとに適切なモデルやアルゴリズムを使い分けることで、AIの汎用性を高め、応用範囲を広げます。
  2. コンポジットAI (Composite AI):
    • 複数のAIモデルやアルゴリズムを1つのAIの中に組み込んで運用する手法です。
    • 画像認識、音声認識、言語処理など、異なる知的タスクを統合的に扱います。
    • コンポジットAIは、従来の単一の学習モデルでは対応できなかった複雑なタスクに対して効果的です。
    • 例えば、ディープラーニングとルールベース型のアルゴリズムを組み合わせて、異なる強みを活かすことができます。
    • コンポジットAIは、従来のAI技術とは異なる系統のアルゴリズムを組み合わせています。例えば、ディープラーニング以前の「ルールベース型」や「知識ベース型」の技術と組み合わせることがあります。
    • コンポジットAIは、人間と同等の知能を持つ「汎用AI」の実現にも重要です。

簡潔に言えば、コンパウンドAIは異なるAIモデルを組み合わせて1つのAIを作り、コンポジットAIは異なる知的タスクを統合的に扱うAIです。両者はAIの進化において重要な役割を果たしています

ガートナーの分析

IT分野を中心とした調査・助言を行う世界的なコンサルティング会社ガートナーによると、コンポジットAIはまだ発展途上の段階にあり、そのポテンシャルを最大限に引き出すための研究や実装が活発に行われています。

この段階では、コンポジットAIのアプリケーションは主に実験的なものであり、具体的なビジネスケースへの適用や広範囲な市場への浸透はこれからという状況です。

実際の事例

BerkeleyのAI研究所では、コンポジットAIを用いたプロジェクトが成功しています。

モデルから複合AIシステムへの移行 – The Berkeley Artificial Intelligence Research Blog

例えば、AlphaCode 2ではプログラムのサンプリングとスコアリングのために微調整されたLLM、コード実行モジュール、クラスタリングモデルを組み合わせて高度な成果を実現しています。

複合AIシステムの利点

複合AIシステムには、以下の利点があります。

  • 単一のAIモデルよりも高い精度を実現
  • より複雑なタスクを実行
  • より柔軟なシステム
  • より高い信頼性

複合AIシステムの課題

複合AIシステムには、以下の課題があります。

  • システムの複雑性
  • 開発コスト
  • データ量
  • 倫理的な問題

複合AIシステムの応用例

複合AIシステムは、様々な分野で応用されています。

  • 医療:診断、治療、創薬
  • 金融:不正検知、リスク管理、投資判断
  • 製造:品質管理、生産ラインの自動化
  • 小売:顧客分析、商品推薦
  • 自動車:自動運転

新たな設計上の問題

複合システムへの移行は、単にトレーニング規模を拡大するだけではなく、巧妙な工学設計を通じてAIの最先端成果を達成することが可能であることを意味します。