AIを分解してみる 構成要素の アルゴリズム、学習データ、パイプラインとは
- 2024.02.20
- AI
昨今あらゆるところで目にするAIにについて、たいていはChatGPTに代表されるような大規模言語モデル(LLM)が既存のシステムやサービスに組み込まれた商品かと思います。
「大規模言語モデル」といっても、どんなものか説明できますか?莫大な量の言語、文法を取り込みその組み合わせを計算できるものといった説明ができればよいのではないでしょうか。
今回は、AIを少し分解してみてみようと思います。
昔、家にあった家電や、おもちゃを分解して遊んだ経験はないでしょうか? アレです。ただ分解して眺めてなんとなくその機械についてわかった気分になるアレ。別に各部品がどうやって作られたか、どうやって作動するか、そのような変遷を経て目の前の形に収まっているかは見ただけではわからないけど、何となくどうやって作動しているのかとらえられるよう。そうやってAIについても少しだけ分解してみます。
AIシステムの構成要素
AIシステムの主な構成要素として、以下の3つがあげられます。
- アルゴリズム:AIの核となるプログラムです。データを解析し、パターン認識や予測などを行うロジックが実装されています。深層学習では、ニューラルネットワークのアルゴリズムが利用されることが多いです。
- 学習データ:AIアルゴリズムを学習・訓練するために利用されるデータセットです。大量の高品質なデータがあればあるほど、AIの性能は向上します。画像認識では画像データ、言語処理ではテキストデータ等が利用されます。
- パイプライン:データの前処理、モデル訓練、推論など、AI開発の一連のプロセスを自動化したものです。データパイプラインとも呼ばれ、開発効率化に大きな役割を果たします。前処理済みデータを学習用と検証用に分割するなどが行われます。
この3つの要素が組み合わさることで、実用的なAIシステムが構築されています。アルゴリズムが精度向上の鍵であり、その能力は利用するデータ次第といえます。
アルゴリズム
自然言語処理アルゴリズムは、テキストを理解して処理するためのアルゴリズムです。例えば、翻訳や要約などのタスクに用いられます。
アルゴリズムには、さまざまな種類があり、それぞれの特徴や得意とするタスクが異なります。AIシステムを開発する際には、目的に合ったアルゴリズムを選択する必要があります。
機械学習アルゴリズム
機械学習アルゴリズムは、データからパターンを抽出し、予測や意思決定を行うための数学的手法やモデルです。
例えば、回帰は連続値の予測、分類はカテゴリ分け、クラスタリングは類似性に基づくグループ分けなどを行います。これらのアルゴリズムには、線形回帰、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどがあります。ニューラルネットワークはパラメータに関する記事にも出てきました
また、画像分類や自然言語処理などのタスクに用いられます。機械学習の中核となる要素であり、データに基づいて決定と予測を行います。機械学習アルゴリズムによって、データを処理するだけでなく、データを使った学習を通じて、プログラミングをまったく追加する必要なく判断能力を高めていきます。
アルゴリズムはAIのコアとなるロジックや数学的な計算手順です。深層学習では、複数のニューロンから成るニューラルネットワーク構造がアルゴリズムの基礎として用いられます。ニューラルネットワーク内のノードの接続関係や、データを通して重み付けを学習していく仕組みなど、高度に複雑なアルゴリズムが利用されています。
アルゴリズムとは、問題を解決するための手順や計算方法のことです。AIシステムでは、学習データから特徴を抽出し、推論を行うためのアルゴリズムが必要になります。
学習データ
学習データは、機械学習モデルを訓練するためのデータセットです。
例えば、画像認識の場合、画像とその画像に関連するラベル(猫、犬、車など)が含まれるデータセットが必要です。学習データは、特徴量(モデルに入力されるデータの特性)と正解ラベル(モデルが予測しようとするもの)を含みます。データの質と多様性が重要であり、データの収集、前処理、ラベリングが必要です。
学習データの品質を向上させるためには、以下の点に注意する必要があります。
- 学習データの量が十分であること
- 学習データが正確であること
- 学習データが偏っていないこと
Bild、音声、テキストなどの形でデータを準備し、これをもとにAIモデルが様々なパターンを学習していきます。学習データには、アルゴリズムが学習する対象となる情報(特徴)が含まれている必要があり、データの質と量が高ければ、それだけ高精度なAIを構築できるようになります。
例えば、画像分類のアルゴリズムを学習させる場合、画像データと画像に含まれるラベル(分類タグ)が学習データとして必要となります。
学習データの収集には、さまざまな方法があります。例えば、インターネットからデータをダウンロードしたり、自社でデータを収集したりすることができます。
パイプライン
パイプラインとは、学習データの収集、前処理、学習、推論、結果の保存などを自動的に行うための仕組みです。モデルの構築から実稼働までの一貫性を確保するために重要です。
データ収集、データ前処理、学習、推論、結果保存などの各フェーズを自動化する機能が含まれています。パイプラインを利用することで、AIシステムの開発や運用を効率化することができます。
この機械学習の一連の流れとは、
- データの前処理(欠損値の処理、スケーリング、エンコーディングなど)
- 特徴量エンジニアリング
- モデルトレーニング
- ハイパーパラメータチューニング
- モデル評価
- デプロイメント
などのタスクをいいます。
大量のデータを使いこなす効率的な仕組みが不可欠なため、データエンジニアリングという分野が発達しています。
分解によるメリット
要素ごとに分けることで、より体系的なアプローチが可能になります。問題の特定、解決策の検討、開発プロセスの最適化など、効果的なアプローチを採用することができます。
理解と透明性の向上
要素ごとに分けることで、AIシステムの構成や機能が明確になります。それぞれの要素を個別に理解することで、その役割や影響を把握しやすくなります。例えば、特定のアルゴリズムがどのように動作し、どのような問題に適しているかを理解することができます。
また、各要素の開発・改善項目が明確になるため、作業の優先順位付けやアプローチの方向性を定めやすくなります。
問題の特定と解決
要素に分解することで、システム内の問題を特定しやすくなります。たとえば、モデルの性能が低い場合、それがデータの品質の問題か、アルゴリズムの選択の問題かを特定しやすくなります。要素ごとの分析を通じて、改善点を特定して対処できます。
効率的な開発と改善
要素ごとの分割により、開発プロセスを効率化し、改善を容易にします。例えば、アルゴリズムの変更や学習データの更新、パイプラインの改善をそれぞれ個別に行うことができます。必要な変更やアップグレードを特定し、迅速に実装することが可能です。
また、どの要素を改善することがシステム全体の精度向上に最も影響するか、要素別の改善効果測定ができるようになります。
専門家の分業化
AIシステムの構築や運用に関わる専門家が、それぞれの要素に集中でき、開発速度をあげられます。例えば、データエンジニアが学習データの準備に集中し、機械学習エンジニアがモデルの開発に専念することで、それぞれの分野での専門知識を最大限に活用できます。
このように、AIシステムを構成要素に分解してとらえることで、AI開発そのものやプロセスをより科学的に進められます。システム全体を俯瞰しながら、要素の詳細を改善するという双方のアプローチが可能になります。
自分たちに役にたつか?
AIを分解することのメリットは、おおむねつくる側のものでした。
しかしこれらを頭の中にとどめておけば、実際にAIに触れた際の解像度が上がります。
過去のハルシネーションに関する記事の中で、ハルシネーションの原因を段階別に識別したが、これはそのまま構成要素の分野分けとなります。
使うAIのハルシネーションが、どの原因が多いのかを把握すれば、使う際にアルゴリズムを重視した商品選択や、自身の持つデータの質による選択肢が絞れてきます。
とりあえず、分解して面白かったので、今回はおしまいです。
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