アメリカがAI規制導入とそこから見えるAIの重心

AI技術は今後の世界のパワーバランスを考える上でも重要な項目であり、日本もこまめに口を出している印象を持っている人は多いかと思います。

AI絵に関するトラブル、ネットの論争を中心に、法規制の必要性の声を踏まえてのリアクション以外にも、産業の国家戦略を掌握したいため。少なくともほったらかしにされてはいないということです。

そんな中の米国の動きはどんなものか、今後のAI産業の重心を見渡すための一手を見てみましょう.

米国のAIへの法的規制

AI=人工知能は、私たちの生活や社会に多大な影響を与えています。しかし、AIには様々なリスクや課題もあります。例えば、AIが作成した偽情報やディープフェイクが拡散されることで、人々の信頼や安全が損なわれる可能性があります。また、AIが人間の意思や倫理に反する行動をとることで、事故や災害が発生する恐れもあります。

アメリカのバイデン大統領は30日、AIの安全性と信頼性の確保に向けた大統領令に署名しました。これは、法的拘束力のある、AIに対する規制の導入はこれが初めてです。

バイデン大統領は、この大統領令について、「AIの安全性、セキュリティ、信頼性に関して、世界のどこの政府もこれまでに取ったことのない最も重要な行動だ」と述べました。

内容

• ＡＩシステムが一般公開される前に、厳格な安全性テストを実施することを義務づける。安全保障上重要なＡＩシステムを開発する企業は、テストの結果や重要な情報を政府と共有することも求められる。
• 生成ＡＩの普及に伴う偽情報の拡散防止のため、音声や映像などのコンテンツがＡＩによって作成されたものかどうかを利用者が判別できるようにする技術の導入を促す。
• 重要インフラやサイバーセキュリティーなどに対するＡＩの脅威への対処をエネルギー省や国土安全保障省に命じる。
• 国民の権利保護にも配慮し、プライバシーの保護技術の開発支援や、ＡＩが差別の助長につながらないためのルール設定を行う。
• ＡＩの技術革新や競争力強化にも力を入れる。ビザ審査や基準を緩和し、ＡＩの高度な専門知識を持つ外国人材が米国で就学や就労しやすい環境を整備する。医療や気候変動などの分野でＡＩ研究への助成金を拡大する。
• 先進７か国（Ｇ７）が生成ＡＩの規制のあり方などを議論する「広島ＡＩプロセス」に基づき、同盟国などと開発や利用を管理するための国際的枠組みを構築する。

アメリカの意図

この大統領令は、アメリカがAI分野で世界のリーダーシップを取るための戦略的な一手とも言えます。アメリカは、中国やロシアなどのライバル国と競争しながらも、AIの倫理的かつ責任ある開発や利用を推進していきます。

この大統領令は、「責任あるＡＩ技術の開発」を掲げるバイデン政権の姿勢を示すものです。今年９月までに米国内の主要なIT企業１５社と自主規制のルール導入で合意していたこともあり、今後は実際にどのように実施されるかが注目されます。

日本の動向

日本政府は、AIの規制について慎重な姿勢を取っており、ルールベースによる規制ではなく、法的拘束力のないガイドラインを策定する方向で進んでいます。

経済産業省は、AI社会原則の実装に向けて、国内外の動向も見据えつつ、我が国の産業競争力の強化と、AIの社会受容の向上に資する規制、標準化、ガイドライン、監査等、我が国のAIガバナンスの在り方を検討しています。
経済産業省が取りまとめる「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン 」において、人間中心のAI社会を目指すための実務的な指針が提供されています。

内閣府が発表した「AI戦略2022」では、AI時代に対応した人材育成や実世界産業におけるAI応用の先駆者を目指すなど、AIの利活用に向けた具体的な目標が示されました。

日本政府は、「人間中心」の考えに基づく責任あるAIの開発と使用に取り組む国際的なイニシアティブである「AIに関するグローバルパートナーシップ（Global Partnership on AI、GPAI）」に参加しました。

日本のやる気

アメリカの今回の法規制は、「広島ＡＩプロセスをうけて」という日本語は、非常にポジティブな見方であり、日本のイニシアティブのあらわれととらえたい。

しかしこれが、日米ないし各国の協調のあらわれととるか、米国の「一番先に行ったもの勝ち」ととるのか。

各国のリアクションと、今後の日本のリアクションが、誰の、どんなメンツを保つものになるかで、今後のAI産業の重心を取り合うことになるのではと思う。