【ガバメントクラウド】ってなに?世界と日本はどんな感じ?
- 2024.02.27
- 用語解説
クリスマスの朝にこんな記事が目に入りました。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/128811
国のシステムをクラウド化するにあたって、自治体とのズレを喚起した記事です。11月にはさくらインターネットが政府のクラウドにというニュースもありました。そもそも「ガバメントクラウド」って何かと思い調べました。
ガバメントクラウドとは
ガバメントクラウドとは、国や地方自治体が利用するクラウドサービスの利用環境のことです。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とし、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し改善していくことを目指しています。
ガバメントクラウドは、2020年にデジタル庁が主導して構築を開始し、2023年12月現在、国と自治体の一部で利用が開始されています。
ガバメントクラウドの特徴は、政府のセキュリティやプライバシー規制に合致した安全なデータ保管と処理が可能な点です。政府機関は機密情報や個人情報を含むデータを管理しているため、セキュリティ上の懸念があります。そのため、ガバメントクラウドは高度なセキュリティ機能や規制順守を備え、政府のデータを安全に保護することが求められます。
ガバメントクラウドのメリット
また、ガバメントクラウドは政府機関の効率性向上やコスト削減を図るためにも利用されます。クラウドサービスの利用により、データセンターの運用やメンテナンスを政府機関自身が行わずに済むため、効率性が向上し、コスト削減にもつながることが期待されます。
ただし、データのセキュリティやプライバシー保護が重要なため、ガバメントクラウドの導入や運用には厳格な規制や監督が必要です。そのため、各国の法律や規制に基づいた運用が行われています。
ガバメントクラウドのメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- コスト削減:クラウドサービスは、オンプレミス型のシステムと比べて、初期費用や運用コストを大幅に削減できます。ガバメントクラウドでは、複数のクラウドベンダーからクラウドサービスを調達し、競争原理を働かせることで、さらにコスト削減を図っています。
- 迅速性と柔軟性:クラウドサービスは、オンプレミス型のシステムと比べて、システムの構築や運用が迅速かつ柔軟に行えます。ガバメントクラウドでは、テンプレートやマネージドサービスを活用することで、システムの構築や運用をさらに効率化しています。
- セキュリティの向上:クラウドサービスは、セキュリティ対策が万全に施されています。ガバメントクラウドでは、政府が定める厳格なセキュリティ基準を満たしたクラウドサービスを採用することで、情報セキュリティの向上を図っています。
ガバメントクラウドは、国や地方自治体のデジタル化を推進する上で重要な役割を果たしています。今後、すべての国と地方自治体がガバメントクラウドを活用することで、行政サービスの効率化や利便性の向上が期待されています。
世界のガバメントクラウド
世界では、さまざまな国や地域でガバメントクラウドの導入が進んでいます。以下に、その代表的な事例をいくつかご紹介します。
アメリカ
米国連邦政府クラウド(Federal Cloud Computing): 米国政府は様々な部局でクラウドサービスを採用し、連邦政府クラウドファースト政策を採用しています。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどのクラウドプロバイダーが、米国政府のデータセンターサービスを提供しています。
トランプ政権下の2018年に「Cloud Smart」戦略が発表され、各省庁はクラウドファーストの方針を取ることが求められています。政府機関のシステムをクラウドに移行することを推進しており、2023年現在、連邦政府のIT予算の約70%がクラウドに費やされています。
米国のガバメントクラウドの特徴は、複数のクラウドベンダーからクラウドサービスを調達する「マルチベンダー戦略」を採用していることです。これにより、競争原理を働かせることでコスト削減を図るとともに、ベンダーの過度な影響力を排除し、セキュリティを強化しています。
イギリス
GOV.UKクラウド(GOV.UK Cloud): イギリス政府は、GOV.UKデジタルサービスとしてクラウドサービスを提供しています。政府部門はこのクラウドを利用して、オンラインサービスを展開し、情報を共有しています。米国と同じくマルチベンダーで展開されています。主なクラウドベンダーとしてMicrosoft Azure、Amazon Web Services、Google Cloud Platformが政府機関でも利用されています。
イギリスでは、「G-Cloud」と呼ばれるガバメントクラウドを構築しました。G-Cloudは、政府機関がクラウドサービスを利用する際に、セキュリティや信頼性などの厳格な基準を満たしたクラウドサービスのみを調達できるようにしたプラットフォームです。イギリスのガバメントクラウドでは、セキュリティとコンプライアンスが非常に重要視されています。政府機関は、個人情報の保護やデータセキュリティを確保するために、クラウドプロバイダーのセキュリティ対策やコンプライアンスへの厳格な審査を行っています。
G-Cloudは、イギリス政府のITコストを大幅に削減することに成功しました。また、政府サービスの効率化や利便性の向上にも貢献しています。イギリスのガバメントクラウド「G-Cloud」は、2023年12月現在、政府機関のIT予算の約40%がクラウドに費やされています。
オーストラリア
オーストラリア政府クラウド(Australian Government Cloud): オーストラリア政府は、データセンターの合理化とクラウドコンピューティングの導入を進めています。政府機関は、オーストラリア政府クラウドを利用して情報を管理しています。
オーストラリアでは、2018年に「MyGov Cloud」と呼ばれるガバメントクラウドを構築しました。MyGov Cloudは、政府機関がクラウドサービスを利用する際に、セキュリティや信頼性などの厳格な基準を満たしたクラウドサービスのみを調達できるようにしたプラットフォームです。534.pdf (clair.or.jp)
2023年12月現在、政府機関のIT予算の約30%がクラウドに費やされています。
その他
カナダ:政府のクラウドファースト政策(Canada’s Cloud First Policy)カナダ政府は、Right Cloud Selection Guidanceという指針のもとクラウドファースト政策を推進し、政府のITインフラストラクチャをクラウドに移行することで、柔軟性と効率性を向上させています。
シンガポール :政府商用クラウド(GCC)-A”Wrapper の運用
日本のガバメントクラウド
日本のガバメントクラウドは、2023年12月現在、まだ構築・運用の初期段階にあります。今後、これらの問題点を克服し、ガバメントクラウドのメリットを最大限に実現することが求められます。
最新情報として、2023年12月20日、デジタル庁はガバメントクラウドの利用状況を公表しました。それによると、2023年12月末時点で、国と自治体の一部で利用が開始されているガバメントクラウドの利用率は、全体で約10%となっています。
アメリカ Cloud Act 法の問題
セキュリティの面では、クラウドサービスの利用に伴うセキュリティリスクは依然として存在しており、対策を強化していくことが重要となっています。
アメリカにおけるCLOUD Act (Clarifying Lawful Overseas Use of Data Actの略)は、米国法の適用下のクラウドベンダーの利用は、たとえ日本国内リージョンのみのデータ保存でも、CLOUD Actによって米政府からデータの開示要求がなされる可能性が存在します。
自治体とのひらき
また、コスト削減の面では、国と自治体によって状況が異なり、コスト削減につながっているケースもあれば、コストが増加しているケースもあります。
冒頭の記事では、7,000億の補助金も、イニシャルコストのみ。さらにランニングコストの増大などがある。
技術的課題の面では、複数のクラウドベンダーからのクラウドサービスの調達や運用の効率化、クラウドサービスのセキュリティ対策の強化、クラウドサービスの利用に必要な技術スキルの確保など、さまざまな課題が残されています。
これらの問題を請け負う能力のあるベンダーが国内にどれだけあるかと言われれば、ごく少数、ともすれば片手で数えるだけとなり、結局国家事業レベルになりそうです。
まとめ ガバメントクラウド
ガバメントクラウドとは、クラウド化して、オンラインで行政サービスを受けるシステムのこと。
先進国では結構やってる。
日本では、IT後進国だけあって問題山積み
でした。
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